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優しくとは?

[ 91] 優しく正しい王様
[引用サイト]  http://www.geocities.jp/iwishyouhope/dokoshuta/library/stories/2003_0705_kinggoodness.html

むかしむかし、インドの北にあるベナレスという街でのことです。その街の王様に、とても賢い子どもが生まれました。その子は王様になると、優しく正しい大王と呼ばれるようになりました。この王様はいつも、何かみんなのためになることを探していらっしゃいたからです。しかし王様は、別に人に誉めて貰いたくてそのようにしていたわけではありませんでした。
王様は財産の多くを使って、貧しい人を助けるための家を六つ建てました。そこでは貧しい人や助けが必要な人、時には名も知れぬ旅人が、自由に訪れることが出来ました。すぐに優しく正しい大王は、その忍耐強さや、親切さ、そしてみんなを思う温かい心によって有名になりました。王様はまるで、お父さんが子どもにするように、誰に対しても接したのでした。
もちろん、優しく正しい大王は聖なる日には食べ物を食べないという決まりを守りましたし、五つの良くない行いを禁じる、「五つの行い」を実行しました。それは、「命を奪うこと」、「自分に与えられた物でない物を自分の物にすること」、「みだらな行いをすること」、「嘘をつくこと」、「お酒を飲み過ぎて、自分を失ってしまうこと」でした。ですから、王様の優しい人柄は、より一層清らかになって行きました。
王様は誰も傷つけないことを願っていました。優しく正しい大王は、悪いことをした人々を傷つけたり、牢屋に入れることも断りました。このことを聞いて、ある大臣が王様を利用しようとしました。大臣は、王様のお城にいる女の人達を騙す計画を立てたのです。
王様は、悪い大臣を自分の前に呼んで言いました。「私はあなたが悪い行いをしたことをつきとめました。人々はみんなこのことをしっており、あなたはここベナレスで、自分で自分の名誉を汚すことになりました。ですから、あなたにとっては街を離れて、どこか余所に行くのが一番良いと思います。自分の財産を持ち、家族を連れて行くのを許しましょう。自分が行きたいと思うところに行き、そこで幸せに暮らしなさい。このできごとを決して忘れず、それから学びとるようにしなさい。」
そこでこの悪い大臣は、自分の家族を連れ、財産を持って、コサラの街に行きました。彼はとても頭が回ったので、そこでも一生懸命働き、その街の王様の大臣に出世しました。まもなく、コサラの街の王様が一番信頼する人となりました。
ある日、大臣は言いました。「我が王様、私はベナレスの街からやってきた者です。ベナレスの街というのは、まるで、針を持たない蜂の巣のようなものです。そこの王様は大変優しく、そして弱虫です。軍隊をちょっと送れば、すぐに街を占領して御自分のものにすることが出来るでしょう。」
コサラの街の王様はその言葉を疑い、言いました。「おまえは我が忠実なる大臣だ。それにも関わらず、まるで私を罠にはめるスパイのような口を利く。」大臣は答えました。「いいえ我がご主人様。もし私の言葉が信用できなければ、それを確かめるために、あなたの最高のスパイを送るのです。私は嘘を言っているのではありません。ベナレスの街の王様の前に泥棒達が連れてこられると、王様は泥棒にお金をあげて、自分のものではないものを取ることが無いようにと教えます。そして泥棒達は自由の身になるのです。」
コサラの街の王様は、そのことが本当か確かめることにしました。そこで、ベナレスとの国境近くにある村に泥棒達を送り、村を荒らさせました。村人達はこの悪者達を捕まえると、優しく正しい大王の前にひったてました。王様は尋ねました。「なぜこんな悪いことをしたのだ。」
泥棒達は答えました。「聖なる王様、私たちは大変貧しいです。お金無しには生きてゆくことが出来ません。この王国には働ける人がたくさんいるので、私たちには何にも仕事が無いのです。だから生活のために、私たちは村を襲ったのです。」 それを聞くと、王様は彼らにお金を上げ、生きていく方法を考え直すように助言すると、自由の身にしてあげたのでした。
コサラの街の王様がこのことを聞くと、今度はベナレスの街の真ん中にある通りに、また別のならず者の一団を送りました。彼らは店を襲い、人々を何人か殺しさえしました。彼らが捕まって、優しく正しい大王の前に連れてゆかれると、王様は、初めの泥棒達と全く同じように扱ったのでした。
その当時、ベナレスの王様には、大変勇敢な象がいる、強力な軍隊がありました。普通の兵士もたくさんいましたが、その中には巨人と同じくらい大きな者達もいました。もしその気になれば、この巨人の兵隊達はインド全てを征服することもできると言われていました。
巨人の兵隊達は、コサラの街から小さな軍隊がやってきていることを優しく正しい王様に報告しました。そして王様に、反撃して全て殺してしまう許可を願いました。
しかし優しく正しい大王は、彼らを戦に送りませんでした。彼は言いました。「我が息子達よ、私が王である限りは、軽はずみに戦に赴くな。もし我らが誰かを滅ぼすならば、それは同時に我らの心の平和も壊してしまうことになる。我らはなぜ人々を殺さなければならないのだ。奴らが悪いやり方で王国をほしがるのなら、そうさせるが良い。私は戦を望まない。」
王家の大臣は言いました。「我がご主人様。私たちは戦いに行きます。どうぞ心配なさらないでください。ただ、命令を下さい。」ところが再び、王様はとどめたのでした。
まもなく、コサラの王様からの警告が届きました。それは、王国を譲り渡すか、戦うかと迫って居ました。優しく正しい大王は返事を出しました。「私はあなたと戦争をするのを望みません。あなたもまた、私と戦争をするのを望んではいません。もし私の国が欲しいのなら、どうぞおとりなさい。たかが王様の名前を変えるために、なぜ私たちは人々を殺さなければならないのでしょう。国の名前とは、それほど大切なものなのでしょうか。」
それを聞くと、大臣はやってきて願いました。「我がご主人様。どうか我が強力なる軍隊を出してください。我々は、武器を持ってあいつらをやっつけ、みな生け捕りにすることが出来るでしょう。私たちの軍隊はやつらの何倍も強力です。誰も殺さず、捕まえることが出来ます。もし私たちが降伏したら、やつらの軍隊は絶対に私たちを皆殺しにします!」
しかし優しく正しい大王は決定を覆すことはありませんでした。彼は、誰を傷つけることも拒否しました。王様は言いました。「たとえあなたが誰も殺したくないと思ったとしても、戦が起これば多くの者達が傷つきます。何人かは偶然に死んでしまうかもしれません。未来のことは誰にも分かりません。敵の軍隊は私たちを殺すかも知れませんし、殺さないかも知れません。私たちの今の行いが正しいかそれとも間違っているかということだけは、よく分かっています。私は、命あるものは誰でも、傷つけたり、傷つけられることを望みません。」
優しく正しい大王は、街の門を開いて、侵略者達を中に入れるように命令しました。彼は大臣達を自分の近くに呼ぶと、このように言いました。「口を開いてはいけません。何もしないで、静かにしていなさい。」
コサラの街の王様はベナレスの街にやってくると、誰も攻撃をしようとしないのを目にしました。そこで王様とその軍隊は街をどんどん進んでゆき、ベナレスの王様のお城にやってきました。そして優しく正しい大王を捕まえると、兵隊達は王様と大臣達の手を縛ったのでした。
そして彼らは、街の外にある墓場に連れてゆかれ、立ったまま首だけ残して地面にうめられました。しかし土が首の回りに迫っても、偉大なる王様は心に怒りを抱くこともなく、何も言わずに居ました。
ベナレスの街の大臣達はみな、優しく正しい王様を心から慕い仕えていたので、口を開く者は一人も居ませんでした。しかし、コサラの街の王様の心に慈悲はありませんでした。彼は荒々しく言いました。「夜よ早く来い。ジャッカル共に、ごちそうをくれてやろう。」
こうして、夜になりました。真夜中になると、ジャッカルの大きな群れがやってきて、墓場をうろつきはじめました。獣たちは、新鮮な人間の肉のにおいがするのをかぎつけました。
獣たちがやってくるのを目にすると、優しく正しい王様と大臣達は、一斉に大きな声を上げてジャッカルたちを驚かせ、追い払いました。その後も二回同じことがあると、さすがに頭の良いジャッカル達は、「この人間達は、俺たちに食べられるためにここに埋められて居るんだ」ということが分かりました。もはや獣たちは恐れることはありませんでした。ジャッカルの王様は、優しく正しい王様の目の前にやってきました。
すると王様は、自分の首を差し出しました。しかしジャッカルが王様にかみつこうとした隙に、素早く王様はジャッカルの顎にかみつきました。獣を傷つけないように注意しながら、王様はジャッカルの顎をしっかりとくわえました。するとジャッカルの王様は、恐怖の吠え声をあげました。それは他の仲間をおびえさせると、みんな逃げていってしまいました。
ところで、王様達が埋められた側には、一体の死体が横たわっていました。それはいつも争っている二人の鬼のなわばりの、ちょうど真ん中にありました。その時もまた鬼達は、鬼お互いの悪口を言いながら、死体の分け前について言い争っていました。
すると一匹の鬼が言いました。「おい、俺たちはせっかくのごちそうがあるのに、なんで口げんかをしていなけりゃならないんだ。そこに居るのは優しく正しい大王じゃないか。あいつの正直さは世界中で有名だ。あいつなら、あの死体の公平な分け方を教えてくれるだろう。」
鬼達は死体を引っ張ってくると、優しく正しい王様に、公平な分け方を教えてくれないかと頼みました。王様は言いました。「我が友よ、私は喜んでお役に立ちたいと思う。だが私は泥だらけで汚れている。まずは体をきれいにさせてはもらえないか。」
二匹の鬼達は魔法を使って、清められた水や、香水、着物、飾り物や花などを、ベナレスの王様の宮殿から運んできました。優しく正しい王様はそれらを使って身を清めると、服を身につけ、香水をふりかけ、花や飾り物を身に纏いました。
鬼達は、他に何かしてあげられることがないかどうか、優しく正しい王様に尋ねました。すると王様は、みんなおなかがすいていると答えました。そこで再び、鬼達は魔法を使って、最高に美味しいご飯が盛られた黄金のお椀と、かぐわしい香り付けがされた水を入れた黄金のカップを、やはりベナレスの宮殿から運んできてくれました。
おなかが一杯になって一息つくと、優しく正しい王様は、今やベナレスの宮殿で眠っている、コサラの王様の枕の下にある、王者の剣を持ってきてくれないかと頼みました。それは魔法を使えばおやすいご用でした。こうして優しく正しい王様は、鬼達のために死体を上手に半分に切ってあげました。王様は、王者の剣をきれいにすると、腰に下げたのでした。
おなかをすかせた鬼達は、二つに切り分けられた死体に喜んでかぶりつきました。そしておなかが一杯になると、鬼達は上機嫌で優しく正しい王様に尋ねました。「おかげでおなか一杯になりました。何か他にお役に立てそうなことはございませんか?」
王様は答えました。「魔法を使って、私をコサラの王が眠っているベッドの隣に送ってはもらえないだろうか。そして、我が大臣達も、みんなそれぞれの家に帰してやって欲しい。鬼達は、あっという間にそのようにしてあげました。
そのころ、コサラの王様は宮殿の寝室でぐっすりと眠っていました。優しく正しい王様は、王者の剣を抜くと、コサラの王様のおなかを優しくつつきました。コサラの王様は、びっくりして飛び起きました。薄暗い明かりの中で、優しく正しい王様が剣を抜いて目の前に立っているのを見ると、恐ろしさで一杯になりました。それが悪い夢でないことを確かめるために、瞼を思いっきりこすらなければなりませんでした。
そして、コサラの王様は尋ねました。「おお偉大なる王様、あなたは一体どうやって、私の家来達に見つからずにここにやってきたのですか?あなたは墓場で首まで土の中に埋められていたはずなのに、どうしてそんな風に、泥の一粒もなく、良い香りを漂わせ、花と宝石で飾った王様の衣服を身に纏っているのですか?」
優しく正しい王様は、どうやってジャッカルの群れを追い払ったのかを話しました。そして、けんかの仲裁を頼みに来た二匹の鬼についても話し、魔法を使って、喜んで彼らが王様の力になってくれたことを話しました。
それを聞くと、コサラの王様は恥ずかしさで真っ赤になりました。彼は優しく正しい大王に頭を下げてこう言いました。「ああ、偉大なる王様、死体の血を啜り、肉をむさぼるようなあさましい鬼でさえ、御身の素晴らしいお人柄を認めております。それにも関わらず、幸運にも人間として生まれることが出来た私めは、これまであなたのお人柄のすばらしさに気がつくことができない大間抜けでございました。」
「私は二度とあなたを陥れるような真似はしないことを約束いたします。我が王様、あなたは誰も傷つけ無いという固い信念を貫き通されました。そして私はこの後いつまでも、真の友としてあなたにお仕えすることを誓います。偉大なる王様、どうぞ私めをお許し下さい。」すると、まるで家来であるかのように、コサラの王様は優しく正しい大王をベッドに寝かせると、自分は小さな長いすの上で眠ったのでした。
次の日、コサラの王様は、自分の軍隊を宮殿の庭に呼び集めました。そしてみんなの目の前でベナレスの王様のすばらしさを称えると、もう一度、自分が犯した過ちに許しを請いました。そしてベナレスを返すことと、これからは優しく正しい大王をいつまでも守ることを約束しました。そして悪い大臣をこらしめると、軍隊と象を連れて、コサラの街に戻ったのでした。
優しく正しい大王は、カモシカのような脚を組んで、大変上品に黄金の玉座に腰をかけていました。真っ白な王家の日傘が、王様を強い日差しから守っておりました。王様は、家来達に教えを授けていました。「ベナレスのみなさん、良き行いとは、まず、五つの良くない行いをしないことから始まります。良き人間の最高の徳とは、それは王様も家来も関係なしに、誰も傷つけないと言うことです。それが例えどんなに高い支払いをしなければならなくともです。その脅しが例えどんなに恐ろしいものでも、こらえなさい。そうすれば、真心は必ず最後に勝のです。」
優しく正しい大王が国を治めている間、ベナレスの人々は平和に本当に幸せに暮らしたそうです。王様は、良き行いを続けました。そして亡くなると、今度は前の人生での行いにふさわしいものに生まれ変わったそうです。

 

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